第0章 新しい春
第1話 ミスコンの結果は?
2月14日
あの日々から1年が経ち、SSRが恋パで行ったミスコンも無事に終了し、その後の打ち上げもつつがなく終わった夜、気持ちの良い疲れの中今日あったことを二乃に伝えるべく、俺はTABを手にしていた。
一登(先に一言チャットを入れとくか)
一登『今電話しても大丈夫か?』
二乃からの返信が直ぐに来る
二乃『大丈夫ですよ、兄さん!
私も早く恋パの話聞きたいです』
二乃『(猫のスタンプ)』
一登『了解(スタンプ)』
スタンプを押すと、すぐに電話をかけた
「こんばんは、二乃」
「こんばんはです、兄さん。それで、恋パどうだったんですか?」
ウキウキした二乃の声が聞こえる。可愛い
「どうだった?て、もちろん楽しかったぞ」
「兄さん、そういうことじゃ、無いです」
少し機嫌が悪そうに二乃は言う
俺はからかうように
「そういうことって、どういうことだ?」
と答えた
「どういうことって、わかってますよね…兄さん?そういう事言ってると私以外には嫌われちゃいますよ」
膨れっ面の二乃が思い浮かぶ、可愛い
いい加減、呆れられてしまいそうだ。そろそろ、教えてあげよう。
「別に俺は二乃に嫌われなきゃなんでも良いんだけどな、アレだろ、ミスコンの結果が気になるんだろ」
「また、兄さんは直ぐにそういう事を言う。白河さんに『常坂兄はタラシの才能がある』て言われてましたよ。」
本題に入ったのにも関わらず、呆れられてしまったようだ。
「そうです。ミスコンの結果についてです。一位はやっぱり鷺澤さんだと思うんですけど、二位以降が気になってるんです。そら姉が順当だとは思うんですけど、最近の兄さんの話を聞いている限り白河さんや美嶋さんも強そうですから、まさかの叶方さんてことも考えられますし!」
二乃は俺が思っていたよりもミスコンの話を楽しみにしていたらしい、焦らしてしまい、少しだけすまいない気がした。
「まあ、上位は予想通りだな。一位が有里栖、二位がそら姉だったよ。だが、三位以降が波乱だったんだ」
「そうですか!やっぱり、鷺澤さんとそら姉は流石の人気ですね。それで、三位以降はどうだったんですか?」
本当に楽しそうだ、可愛い
「結果としては、三位が白河、四位がちょこ、五位が美嶋て感じだったんだがな…」
少しハギレ悪く俺はそう告げた。
「貯めた割には、割と順当ですね。白河さんが上位にくるのは恋愛請負人時代の知名度と辞めてからの人気上昇の重ね技て感じですかね。日野原さんが美嶋さんよりも順位が良かったのは、やっぱりマイチューブでの知名度がある日野原さんが、追いかけっこを辞めてからの美嶋さんの人気では勝てなかったということですか。お二人ともまだ付属生ですから、これからに期待ですね」
結構な早口で二乃は生き生きとミスコンの結果についての考察を語っていた。マジで楽しみにしてたんだな。
「お前は解説者か何かか?こっちに居ないのによくわかるな、そこまで」
ついつい、その洞察力に感心してしまう。
「兄さんに毎日話を聞いてましたから。それで、何か歯切れが悪かったですけど、まだ、何かあったんですか?」
「それがな、本当の三位は俺で四位が叶方だったんだ。もちろん最終的には無投票にはしたんだが」
流石の二乃も困惑したのだろう、少し間があった。
「お兄さま、何を言ってるんですか?叶方さんはわかりますよ。女子からの人気がありますから、今回のミスコンは男子のみの投票じゃなかったのは知ってますし。でも、お兄さまが三位ておかしいですよね?」
二乃は少し早口でそう喋った。だいぶ、困惑しているようだ、可愛い
「いや、多分、俺が一番驚いてるよ。後、お兄さま呼びはやめてくれ」
「・・・。わかりました。杉並くんの悪ふざけですね。」
流石は二乃、少し冷静さを取り戻したみたいだ。流石は俺の妹、可愛い
「あー、正解だ。最初は票が入っていても壇場に立ってくれる人が少ないからとか、上位がSSRメンバーばかりになりそうで良くないとか、そんな理由で俺が女装して立候補することになったんだ」
そう俺はありのままの事実を二乃に告げた。
「まず、兄さんが女装して立候補することに普通は違和感を覚えるんですけど、いつものSSRと兄さんて考えるとおかしくはないですね。でも、三位はおかしくないですか?後、思ったんですが毎日私に電話してたんですから、妹であり彼女の私に相談の一つもなかったんですか?」
わりと怪訝にそう聞いてくる。たしかに『彼女』には伝えるべきだと俺も思っていた。
「すまん、俺も伝えたかったんだが、みんなが後で二乃を驚かせてやれってうるさくてな。特にそら姉に言われたんじゃ敵わなくて」
「それなら、仕方ないです」
少し、納得いかないようだが、一応は納得してくれたようだ。
「その写真早く、送って下さい」
まだ、怪訝ではあるが焦るようにそう言ってくる。
「はいよ」
そう言うとTABを耳から外し、あまり送りたくもないのだが、これ以上機嫌を損ねるのも良くないので二乃のチャットに写真を添付した。
「可愛い…」
二乃もTABから耳を写真を見るために離しているためか、小声でのそんな感想が聞こえてくる。そんなに素直な感想を言わないで欲しい、照れる。そう思い話を俺の女装から離すために、話を元に戻そうとした。
「本題に戻るが、いきなりでてきた謎の美人がミスコンに立候補するのもおかしな話だとか、どうこう言って、杉並と白河が宣伝しまくってな。そして、叶方の技術力が合わさってこの結果だ」
事実を告げているだけなのだが、自分でも突飛なことを言っていると思う。
「まあ、だいたい状況はわかりました。今度は私にも見せて下さいね!お・に・い・ちゃん」
あー、二乃が帰ってきたら、また、叶方にキャンパスにされるのか…
その後も杉並や叶方の凄さ、恋パで起きた面白い話などを語っているうちにいい時間になってしまった。
「そろそろ、夜も遅いから電話切るな」
「今日はいつも以上に面白い話が聞けて楽しかったです。そこで私からも楽しい話があるのですが」
小悪魔モードのときの喋り方でそんなことを言う、一体なんだろう?
「実は来月、香々見島に帰ろうと思います。」
あー、そう言うことか、確かに楽しいことだなと俺は納得した。
「春休みに入るしな。正月も会えなかったし、楽しみにしてるよ。それで、何日に帰ってくるんだ?」
「来月の15日の予定ですけど、兄さん勘違いしてますよね。修行が終わったので帰るてことです。これで一緒に暮らせますね!」
俺は予想外の出来事ごとにTABを落としてしまい、こちらを呼ぶ二乃の「兄さん」と言う声も聞こえずに、心を落ち着けるためそら姉へと電話をかけていた。
次回