D.C.4 二乃√エンディング後SS 第0章第2話大切な人

第0章 新しい春 

第2話 大切な人

水中に立つ桜、桜は狂い咲きという言葉では足りないくらいの満開。

まるで、散るよりも速く咲いているようだ。

空には水面。水中にあるようだか、いきはできる。そんな懐かしい場所。

あーこれは夢だ。俺はそんな風に自然と思った。二乃と付き合う前、三美やジジイとの過去の夢を見ていたことを思い出す。

(最近はあんまり見てなかったんだけどな)

そんなんなことを考えながら桜の木の方を見ていると、一人の少女がいることに気がつく。

ただ、そこにいる少女はあの頃、夢に出てきた、ワンダーランドの『アリス』のようで、どこか有里栖に似た少女ではなく、金髪でツインテールの見た目は小学生くらいにも見えるが、どこか大人びても見える不思議な少女だった。

そして、不思議な少女はゆっくりと話し出す。

「はじめまして、久しぶりだね。一登。まさかこの一年でボクの姿をきちんと認識できるまでになっているとはね。流石は元さんの孫ということかな。ご褒美になんでも、質問を聞いてあげよう。答えられるかはわからないけどね」

彼女はイタズラするように微笑みながらそう語る。

ここは夢の世界のはずだ、俺も正体は知らないがうちには一子相伝の魔法があるらしい、それを除けば常坂家の魔法の本質は『夢』にあるということだ。二乃は叶える『夢』で俺は寝ているときに見る『夢』。つまり、ここは俺の場所。そこでこのように意識をもって自分に話しかけてきている。そして、ジジイのことを知っている。彼女も『魔法使い』なのだろう。

ただ…

「君は誰なんだ?」

あの頃からの疑問だ。とりあえず、そんなことを俺は聞いてみた

「自己紹介がまだだったね。会話するのであれば呼び名は大切だよね。ボクはさくら、一登が思っているように魔法使いだよ。」

さくらという名なのか、少し懐かしいきがする。

「そうか。じゃあ、さくらはここで何をしているんだ?」

少し考えるようにした後、さくらと名乗る魔法使いの少女は言葉を続ける。

「いくらでも質問しても良いと言ったけど、質問責めする気だね。何をしているかと聞かれると、少し難しいな。一登も知っているとおり、さっき答えられるかはわからないて言ったけど、話すということや知るということはそれだけでも、魔法に影響するからね。うーん、今の一登にわかるような言い方は私にはできないのだけど、あえて言うなら、ここの番人かな」

正直、番人については意味がわからない。ただ、ジジイのもっていた本には知は精神に関わり、精神が魔法だと言うことや、言霊とは魔法の一つだと書かれいた。それに、二乃の祈りの魔法は夢を叶えることであり、言霊と似ていると先生は言っていた。また、それを精神によって制御しようとしていて、知識もつけているのだ。だから、話せない理由については、魔法を学んだおかげで理解はできる。

「詳しくは話せないが、魔法使いとしての務めてところか?」

さくらは何かに満足したような表情で語り出す。

「そんなところだよ。物分りが良くて助かる。これでも君達の努力のおかげで話せることも増えたんだけどね。一登が起きたとき覚えていればだけど、私の務めについては音夢に聞くといい。こっちの彼女はお兄ちゃんより魔法に詳しいから、それが彼女の役目になっているしね」

本当に、答えられるかわからないし、俺が目覚めてからお覚えているかもわからないが、俺が聞きたいことは聞いて良いということか。なら、言いたいことは言っておこう、俺は改めてそう思う。

「いろいろと前置きをありがとう。ところで本題はなんなんだ?」

彼女がどれだけの魔法使いなのかはわからない。 ただ、先生やジジイと面識のある彼女が、ここに来ているということは何か意味があるのだろう。

「これから一登には一人の少女を助けてもらうことになる、その少女は一登にとって大切な人だよ」

多分、その人とは二乃だろう、そして、魔法が関わることなのだ、魔法について少しは学んでいて良かったと本当にそう思う。

「で、詳しくは何をするんだ?て、聞きたいところなんだが、どうせ答えられないんだろ?」

さくらは申し訳なさそうに語り出す。

「うん、そうだね。それも音夢の役目だから、いずれわかることだよ。でも、ボクが伝えたいことは、この世界は一つの分岐であることを覚えておいて欲しい。そして、他の分岐世界では彼女は救われている。それでも、一登、君と二乃の恋で、この世界を変えて欲しいんだ」

ずいぶんとロマンチックなことを言うなと思う、だが、恋は魔法を強くするからそういうこともあるだろう。ただ、二乃を助けるということはその前に危機が迫るということだ。吹っ切れてはいるのだが、大切な人の危機というと、三美や両親のことがよぎってしまう。そして、俺はぼやくように言ってしまう。

「魔法について独学でしかない、俺にそんなことができるのか?」

大切な人を守れないことを考えると、やはり、少し不安になってしまうのだ。

「未来というのは一つの出来事から普遍的に変化して確定するんだ。だから、なんの心配もないよ。二乃との関係もそうだから」

さくらには確信があるのだろう、不安は少しやわらだいだ。

しかし、一点だけ違和感を感じる。二乃のことは二乃と呼んでいることにだ。つまり、

「俺にとっての大切な人てのは二乃じゃ無いのか?」

俺にはそこが疑問だった。

「ごめんなさい、ボクにとっては全てだったから気づいていなかったよ。確かに、この世界の一登にとっての、それは二乃だったね。ただの分岐と終着の話なんだ」

さくらはあえて難しい言い方をしているのだと思う。つまり、俺には二乃以外と恋をする可能性があって、その恋は世界を変えたということだろう。なら、俺は素直に問う。

「じゃあ、その大切な人とは誰なんだ?」

さくらは質問をされる前から、わかっていたようすぐに返す。

「気づいているでしょ、それは言えないの」

諭すように彼女はそう語る。

これまでの言い方から察してはいた。しかし、聞かざる終えなかった。次に何を言おうか考えていると、空から地上全体に広がるように、この世界がうなり『ジリジリジリ』そんな音が聞こえてくる。

「タイムリミットか」

「ああ、そうだね。もう少し、伝えられるはずだったんだけどね」さくらは少し申し訳なそうにしている。

「いや、ありがとう」

わざわざ、来てくれただけでも有難いそう思いながら、俺は目覚めていった。

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