第0章 新しい春
第3話 いつもの朝へ
2月15日
『ジリジリジリ』目覚ましの大きな音で俺は夢の世界から目覚めた。そう、夢の世界から、夢…大切な話をしていた気がする…
俺は寝ぼけた頭で1つ1つ思い出していくことにした。頭が完全に冴えてしまったら、もう思い出せない、そんな気がしたからだ。
俺は、金髪の少女と話していた…名前は…さ…さく…さくや?いや違う…多分、「さく」までは正しい。
うーん、もっと素直な名前だったと思う。夢に関係するものだ…あー、さくらだ。そう、さくらだった。
なぜ、直ぐに思い出せなかったのだろう?あの夢の世界で桜を忘れるわけがない。それと同じ名であれば忘れるわけがないのだ。やはり、魔法の力だろうか…
魔法…そこでもう一つ思い出す。彼女も魔法使い、だから夢に出てきた。そして、彼女は俺が大切な人を救うとそんなことを言っていた。
だが、これ以上思い出せない。大切な話をしていたはずなのに…
完全に目が覚めてしまった。
まあ、魔法の話だったのは確かなのだから、先生に聞いてみれば良いか。俺は楽観的に考えることにした。
下に降りると既にそら姉がが朝ごはんの支度をしてくれていた。
「おはよう、そら姉」
俺がそう話しかける。
「おはよう、いっちゃん」
そら姉は台所から声を返してくれる。続けてそら姉は
「いっちゃん、昨日は驚いたよー。二乃ちゃんやっと帰ってくるんだね。」
と二乃が帰ってくることへの喜びを全力で表してくれる。
さらに、いさめるようにそら姉は言う。
「でもね、いっちゃんいくら驚いたからって、女の子からの電話をいきなり切ったりしちゃいけないんだよ。」
夢が濃いものであったせいか抜けていた昨日の夜のことを思い出しながら俺は
「そら姉にも二乃から電話来たんだね。二乃怒ってなかった?」
と申し訳なさげにそら姉に尋ねてみた。
「うーん、むしろいっちゃんを驚かせたことに満足してたかな。」
俺は二乃を怒らせていなかったことに安堵する。
「でも、いきなり電話を切ったりしちゃダメだからね。」
優しくそう言ってくれた。
「そうだね。今晩謝るよ」
俺は素直にそう答えた。
「朝ごはんできたよー」
そう言って、そら姉は美味しそうな香りがする朝ごはんを運んできてくれた。
「「いただきます。」」
二人で言い食べる朝ごはん
もう1年近く経つものの長年続けていた日課がなくなると違和感があるもので、やはり、二乃のいない朝には違和感を感じている。
「二乃やっと帰ってくるんだな…」
俺は噛み締めるように呟く。
「本当にね…」
そら姉も呟くように返す。
そら姉も俺と同じように二乃のいなかった日々の違和感と帰ってくるということを改めて思い感じたのだろう。
その後、二人とも呆けながら俺たちは学校へと向かった。
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